匿名

日記

ライトグリーンのスコップ

犬の散歩に行かねばならない。朝から頭の右側がシクシクと痛んだが、日課を欠かすことを嫌う犬が吠えて催促するのだ。たとえ台風が来ていても大雪の日でも、かの京急でさえ運行を休止するような日でも犬は散歩へ行く。

服を着替えるのも億劫だ。電気もつけずに1日が終わっていた。気づけば部屋は真っ暗で、時計を見ると18時を少し回ったところで、早い日暮れが夏の終わりを嫌でも教えてくる。

家を出て鍵を閉め、引っ張る犬をなだめながら空を見上げる。上弦の月というやつの右下に小さな木星を見つける。西の空は黄色から群青のグラデーション。

犬は本能のままに、感情のままに、行きたい方向へ向かう。引っ張られながら公園の入り口を進む。新婚らしい夫婦がトイプードルと戯れているのを横目に、老婆がコーギーとともに静かに座っているベンチを通り過ぎながら、犬がクローバーを嗅ぎまわるのを見つめる。落ちていたライトグリーンのスコップが哀しい。

偏頭痛は治らない。