匿名

日記

2023-01-01から1年間の記事一覧

第二章の序文に代えて

ディズニーリゾートにまだ見ぬ我が子を連れて来たいと思うとき、人はひとつ大人の階段を上がるんじゃないかと思う。愛のバリエーションを増やした証拠なのだと思う。 愛にはいくつかの種類があると言うが、そのうちの複数をたった一人に抱くことはあるのだろ…

第一章のあとがきに代えて

恋人という役割の不在はかつて恋人であったひとの永遠の不在を意味するわけではないのだけれど、ついそんなふうに誤認してしまうのが、恋人という役割の特殊性なのだと思う。 狂おしいほどの愛おしさを持て余す生活の、ぽっかりと穴が空いたかのような感覚を…

ゴジラ-1.0を観た

(ネタバレ有) 世界からこれだけゴジラが注目されてる中で戦争の象徴としてのゴジラをきっちり描き切ったのはすごいよな、さすが70周年だけある。安直に日本を賛美する意図はないんだけど、ここで「(国土を焼け野原にした/ゴジラを目覚めさせた)アメリカ…

夏の終わり

夏の終わりの夕立が迫っていたので、犬の散歩を足早に切り上げた。帰ったらすぐにパスタとポトフを作ろうと思っていたのに、軽い低血糖を感じて、急いで何か軽く食べることにした。冷蔵庫を開けると、賞味期限切れのチーズアソート、ほんの少しだけ残ったコ…

夏じゃない夏みたいな話

カウンセラーが「今、わたしは何かあなたにとってとても大切なことを聞いたかもしれない。次の予約日にはその話をしましょう」と言って立ち上がった。彼女の後ろについて部屋を出て、梅雨の前にしては夏らしい太陽の下に出て、電車に乗って、その間中わたし…

五月の雨の次の日

梅雨のすこし手前。雨の降った次の日のの夕方は、風が湿って生ぬるくて、陽が落ちるのが遅くて、ひとの活動とわたしの生活の時間がずれるのが面白い。 みんなが働いている時間に、わたしは1日を終える支度を始める。いつもは帰宅後くたくたの体で手をつける…

好きだとか

恋人と高いところにのぼるのが好きだ。夜であればなお良い。地上の無数の光を眺めて、言葉にできないほど壮大で美しい光景を形作る人々を尊敬しつつ、いずれわたしたちもそちら側へ足を踏み入れるのだろうと、そしてこの世界も捨てたものではないと、恋人の…

慣れと成長

玉ねぎを切りながら、昔のわたしが毛嫌いしていたバンドの曲を聴いていた。どの曲も似たり寄ったりで、等しく若者の汚さをなんとなく「いい感じ」に昇華している。性だとか愛だとか夢だとかについて語るような、がなるようなボーカル。はやるギターと、それ…

台湾の日没後の高鐵の話

好きな人ができて、好きな人が恋人になって、恋人と離れ、海外に来た。 海外とはいえ台湾だし、離れたとはいえほんの1週間だし、ただの大学の研修である。せっかくの機会なんだから日本のことなんて忘れて思う存分異国文化と学びに身を沈めたい…なんて思う自…