匿名

日記

夏目漱石のこと

今でも、お財布に1000円入っているだけで自由な気持ちになる。たった1枚の紙幣。でもそれさえあればティーラテが飲める。豚カツが食べられる。本だって買えるし何なら映画館にだって行ける。

人間の一生分の経験を数値化することができたとして、全ての人間の平均を1と置くとしたら、1冊の本はきっと0.01くらいのものだと思う。でも文庫本1冊は500円もせずに手に入って、1000円あれば2、3冊は文庫本が買えて、だからお財布に夏目漱石が1人いるだけで私は平均的な人間の経験する1/50程度を味わうことができるはずなのだ。

1本の映画は2時間程度だけど、そこで私は知らない誰かの一生の一部を過ごす。それは1年もないかもしれないし80年以上もあるかもしれない。でも確実に2時間以上の価値はある。

いつか私も1枚の紙幣にほんの少しの価値しか感じなくなるのだろうか。