匿名

日記

可愛いあの子

昨日私の人生が変わった。

1本の電話がきっかけだった。

「あなたは私の憧れなんだよ。できることなら私はあなたになりたい。だからもう自分を卑下しないで。そうやって自己否定しているあなたの言葉を聞くと、そんなあなたに憧れている自分がひどく劣っているように感じるの。」彼女は震えた声でそう言った。一度電波に変換され翻訳された人口の声には、確かに彼女の心があった。

 


自己否定とは自己防衛だ。他者から貶められ傷つくくらいなら、始めから自分を低めてその衝撃を減らせば良い。他者からの悪意に晒された人間の本能的な行動だ。

軽い暴力と暴言を躾の範疇とする親、仲の良さを理由に容姿を論う友人。彼らは私の人格形成に影響するには十分すぎるほどの条件を兼ね備えていた。自分の実力なんて自分だけが知っていればいいのだ。100点を取ったのはまぐれだ。それが2回3回と続いたところで、100点の実力を認めてしまえばすぐに次を要求されてしまうのだ。99点では認めてもらえないのだから、始めから80点だと嘘をつけば良い。

80点だと嘘をつき続けた結果、私は81点だと言うのが怖くなった。79点を取ることを恐れた。

褒められるのが怖い。褒められるといざ否定されたときに衝撃が倍になる。怒られるのが怖い。価値のない自分でさえ過大評価だったと感じる。

 


声に滲んだ切実さから、彼女の言葉は絶対に嘘ではないとわかった。肩まである艶めく黒髪。やわらかい肌。ほんのり甘い香り。元気な笑い声。彼女の全てが思い出されて、耳元の泣き声が最高に美しかった。

 


もう馬鹿みたいに謙遜するのはやめようと誓った日だった。