匿名

日記

慣れと成長

玉ねぎを切りながら、昔のわたしが毛嫌いしていたバンドの曲を聴いていた。どの曲も似たり寄ったりで、等しく若者の汚さをなんとなく「いい感じ」に昇華している。性だとか愛だとか夢だとかについて語るような、がなるようなボーカル。はやるギターと、それを抑えるようなベースと力強いドラム。これまでのわたしはこの青さが嫌いで、どうしても聴けなくて、でもなぜか今年のわたしにはそれが好もしかった。

服や容姿にお金を出して、いわゆる女らしい格好をして、毎朝長い時間をかけて社会に迎合する過程を踏むのが、楽しいと思えるようになってきた。幼い頃は自分の肉体が女であると認識するのすら生理的に嫌だったのに。今や、他人から女性として扱われ性的に値踏みされるのを心のどこかで喜んでいる自分がいる。社会的に見ておかしくない存在になれていることに安心している。昔の自分が今の自分を見ても、きっと同じ人間だとは思えないはずだ。

料理をするのが苦じゃなくなった。恋人の口に入るものを作る技術が自分にあることが嬉しかった。恋愛が自分の幸福度や人生の選択肢を左右するようになるなんて思っていなかったのに。結局わたしも無個性で普通の人間のうちの一人として生きていくんだろう。

毎月股から流血するイベントにも慣れて、自分の中は生臭い液体で満ちていることに気づいた頃、こういうことの積み重ねの先にあるのが死なんだとふと思った。