匿名

日記

アスファルト

惰性で噛み続けたガムが無味になっていたことに気づいたとき、彼女に振られた日の蝉の声を思い出した。うるさかった。 絞り出した私の2文字は雑踏にかき消され、気づかないふりをして彼女は改札の向こうへ消えていった。アスファルトの照り返しと帰り道の蝉…

マスク

何気なく当たった彼女の指先の熱がまだ、背中に残っている。きっとあなたは何も気にしていないのだろう。強く意識している私の感情なんて知る由もない。 冷たい雨の降るあの日、ふたり同じ傘の下で石段を降りた。鼓動がうるさいのは私だけで、雨音に感謝しな…

ティーラテ

今にも落ちてきそうな灰色の空に懐かしさを感じた。学校の小さな四角い窓からひとり見つめた空はいつも同じ、ちょうどこんな色をしていた。 進級直後の花曇り、高さの合わない椅子に座って足をぶらつかせながら桜の匂いを嗅いでいた朝。梅雨の日、夏休みを前…

ライトグリーンのスコップ

犬の散歩に行かねばならない。朝から頭の右側がシクシクと痛んだが、日課を欠かすことを嫌う犬が吠えて催促するのだ。たとえ台風が来ていても大雪の日でも、かの京急でさえ運行を休止するような日でも犬は散歩へ行く。 服を着替えるのも億劫だ。電気もつけず…

幸せ

幸せなんて存在しない。あるのは現実世界で起こっている事実と、それを受け取る自己だけ。 事実をうけた自己が判断した結果が幸せか否か、であり、しかしそもそも自己というもの自体が定まることはないため継続する幸せは存在しないのだ。一瞬「ああ、いま幸…

お茶を点てるとき、茶筅通しをした瞬間に立ち上る竹の香りが好きです。ぱさぱさに乾いていると思っていた茶色い竹を湯につけると静かに香る微かな青い匂い。湯の沸く音だけが響いている茶室。 今日のお茶碗は、吹雪に負けない笹が描かれてた。お軸にも力強い…

おーるもすとさむしんぐむり りとるびっとおーけー

つらみ。だった日に、「おーるもすとさむしんぐむり りとるびっとおーけー」ってメモに書き残してて、なかなか我ながらセンスあるなって思ってた。 人が何かを表現するときって、そうしないと自分がもたないときなんだろうなって思った。良くも悪くも。きつ…

プレゼントのこと

プレゼントを探す時間がすごくすごく好きです。渡したらどんな顔をするだろうか、使ってくれるだろうか、そんなことを考えたら嬉しくて、選んでいる最中ににまにましてしまう。 この気持ちを抱けるのはわたしが恵まれているからだ。誰かへのプレゼントなんて…

知識欲のこと

生と死って大差ないと思ってたの。「わたし」が存在しているかしていないかなんてそこまでの違いはなくて、「わたし」の存在は少なくとも確実なんだからどっちでもいいのでは?とか思ってた。 でも違うのね、わたしはこれから美しいものや正しいものとかそう…

くだらないこと

ものすごく身も蓋もない説だからわたしはこの考えが嫌いだけどお風呂に入ってるときにふと思いついたから残しておきます。 愛とは生物の遺伝子上に組み込まれた自己防衛の手段の1つなのではなかろうか。親子愛はひとえに自分の遺伝子を残すためであり、恋人…

今日見た映画のこと

散り椿を観た。 観始めてまず抱いたのが、ワンシーンの終わり方への違和感。なんでこうも中途半端なのだろうと思った。ふくみを持たせる脚本だった。 ワンカットごとに画になる。役者含め人も木も土も山も建物も服も花も、全てが作品だった。やっぱりお約束…

さんぽのこと

今日は空気が冷たくて息が染まりそうなほどでした。金木犀の甘々な香りが空気をしっかり染めてました。あ"〜寒い日は光が鋭い気がして寂しさが倍に感じられるよね。冬は人肌恋しいとか そんなこと思ってみたりして。痛いな自分て思い直してやっぱり寂しくな…

畳語のこと

今日はリーマンショックがあった日なんだって。リーマンショックって、リーマンがショックを受けた恐慌っていう意味じゃないんだってね。この間知った。リーマンブラザーズの会社が潰れたからリーマンショックらしいよ。 今日は霧みたいな雨が降ってて、とて…

秋と砂糖のこと

涼しい風の吹く夜に、家々の灯りを眺めながらお芋の餡のお団子を食べたい。すこし古臭くて懐かしい味はきっと虫の声によく合う。 どの家の灯りもそれぞれ物語を持ってて、わたしにとって会社員Aのおじさんからしたらわたしはきっと女子高生その1で、電車で隣…

つぎのきせつのこと

今朝の雨はまるで春みたいだった。 服の袖口を優しく湿らせる。傘に柔らかくあたる。地面を静かに叩く。 帰り際に降ったのは秋を感じさせる冷たい雨。 傘は激しい音を立てる。容赦なく肌を打ち付ける水滴。車のライトや信号の光が濡れた地面に反射して、自分…

まるのこと

あまいものは世界をまるくすると思うんだよね。丸が正しいのかって言われたら考えちゃうけど、大事なのは正しいかどうかじゃなくて傷つくかどうかじゃないかなぁとかなんとか。 今は夏だからアイスとかいいよね。ケーキよりは気楽な感じがするし、つめたくて…

にがてなこと

ブラの肩紐が落ちてきたときの不快感というか嫌な感じが絶妙すぎるよね。人目もあるから無造作に手を突っ込んで直したりとかしづらいし。 電車で、怒鳴り声で電話してるおじさんを隣のドアの前で見かけたくらいになんともいえない感がある。 風の強い夜は怖…

かおりのこと

あまいにおいのおんなのこになりたいなとおもいます。 おはなとかせっけんとか、そういうのもいいんだけど、やきたてのクッキーやバターやおさとうのかおり。 なんでそう思ったかというと、きょうおいしいアフタヌーンティーと巡り合ったからです。微かに暗…

飽きることと慣れること

飽きると慣れるの違いってなに?って わたしはもういい加減夏休みに飽きてしまった。だから明日からまた始まることは嫌じゃない。でも宿題にさえ飽きてしまったから困っている。慣れることはいいこと?飽きることは悪いこと? わたしはたぶんものすごい飽き…

判断すること

今わたしにやりたいことが見つからないのは、これまでわたしじゃない誰かの望むことを先回りして答えてたからだと思う。自分の存在を自分がたった今思考しているという事実から証明できるのならば、わたしじゃない誰かの考えを自分の考えとしていたわたしの…

おかねのこと

お金の価値は変わる。 極端な例だけど、千と千尋の神隠しでカオナシが手から金をばらまくじゃん?みんなは喜んであれを貰うために散々カオナシをもてなすんだけど、最後は土塊に戻っちゃう。 この間もどこかの国で通貨の価値が10万分の1?になったらしいよね。…

でんしゃのこと

本を読むなら電車の中だなと思う。家だと家族に声をかけられたり他にしなきゃいけないことを思い出したりする(思い出したところでやるとは言ってない)からなかなか集中できない。 電車は、夏は涼しく冬は暖かくてちょうどよい。座席はふわふわで(路線にもよ…

ぎゅうにゅう

わたしはぎゅうにゅうがすきです。つめたいのをのどが渇いたときに飲むと、その瞬間頭が真っ白になってしあわせに包まれるからです。こうふくかんんん〜〜〜てなります。おいしい。ほんのり甘くてぎゅうにゅうの香りがして、白と黒のうしを思い出します。う…

ことばのこと

言葉は空気に溶かすことができる。人間の体内にあるうちは溶けないけど、一度でも放出されるともう取り消すことはできない。ただ、小さな言葉や薄い言葉は特別な環境下でない場合簡単に溶けてしまう。 体内にあるうちは溶けないから、出しそびれた言葉の素は…